ぐに△4二飛と転回。自身の指した将棋の逆を持っての戦いで、前例の進行をたどっている。
*船江七段から「前例はあるんですかね」との声がし、前例の進行を確認すると、「あっ、めちゃくちゃ最近の将棋ですね」と苦笑いを浮かべる。進行を聞いただけでいつに指された対局なのかを思い出せるのは、さすがというよりない。
*10時18分、藤井は羽織りを脱ぐと、丁寧に折りたたんで自身の左に置いた。永瀬は左に傾けながらの前傾姿勢で、額に手を当てている。
*控室では福崎九段と船江七段による継ぎ盤検討が開始されている。前例は▲4四歩△同銀▲7九玉の進行だが、「何かいつでも飛車で金取りが掛かる形で、先手を持ってめちゃくちゃ怖い気がするんですが」と、船江七段。代えて、ここで単に▲8三角を挙げ、以下△5二角の進行を福崎九段も「それが自然な進行のように思いますけど。先手の角はなかなか取られそうにないですし」と、同調。△5二角以下▲6六銀△7一金▲7五歩△同歩▲同銀が並ぶと、後手側に座る船江七段は「もうどう指していいか分からないです」と言って苦笑いを浮かべた。
*「このあたりは両者とも研究をし尽くしているんでしょうね。僕は▲8三角を予想します」(福崎九段)
*藤井が40分以上考えている。船江七段は「▲4四歩か▲8三角しかないと思いますが、考えられているということは▲8三角かもしれないですね」と述べた。
39手 8三角打 (51:00/01:22:00)*51分の長考で角を打っていった。
*「あ、ソフトタッチで指したね」(福崎九段)
*「さすが、福崎先生、当たりましたね」(船江七段)
*「いやいや、二択やったやん」(福崎九段)
*「次の手は当てる自信あります。△5二角」(船江七段)
*「それ、一択やん」(福崎九段)
40手 5二角打 ( 1:00/00:14:00)*角には角。金取りと▲7四角成を防ぐにはこの一手だ。
41手 6六銀(77) (12:00/01:34:00)*銀を出ていく。△7一金には▲7五歩△同歩▲同銀のほかに、▲5五銀左があるようだ。以下△同銀▲同銀に△8二金で角の行き場がないが、▲5一銀が用意の切り返しで先手よし。△8三金には▲4二銀成から▲8一飛で竜を作りながら駒を取れる。
42手 4五歩(44) ( 1:00/00:15:00)*4筋の歩を取っておく。次に△4六歩でプレッシャーを掛けるほか、△8六歩と突き、▲同歩なら△8二歩で角を捕獲する狙いがある。
43手 7五歩(76) ( 1:00/01:35:00)*ゆっくりとしていられないのは百も承知とばかりに、すぐに7筋を突き出した。
44手 6三銀(54) ( 1:00/00:16:00)*すんなりとは馬を作らせない。▲4五桂が生じるが、▲3三桂成や▲5三桂成に△4八飛成と
王手で金を取れるため、余裕がある。もちろん、△4四銀と逃げて△4五銀を目指すのもあるだろう。
*展開としては藤井の攻めに永瀬がカウンターや駒得を狙っていく将棋になりそうだ。ただし次にすぐ△7二金は、▲同角成△同銀に▲6二金があってやりにくそうだ。
45手 4五桂(37) ( 3:00/01:38:00)*3分で桂を跳ねていく。後戻りできないため決断の一手でもあるが、このあたりはまだ研究の可能性もある。
46手 6二金(61) ( 1:00/00:17:00)*金を立って▲5三桂成に△同金を用意しながら角を切られる手を消した。このあとは△4一飛〜△8一飛のような順で角を取りにいくことも可能だ。
47手 4六歩打 ( 2:00/01:40:00)*歩を打って▲3三桂成のときの△4八飛成を拒んでおく。△4四銀が先手にならない予防にもなっている。
48手 4一飛(42) ( 1:00/00:18:00)*銀を逃げない。飛車を引いて▲3三桂成△同金のあとの▲5一銀を消しながら△8一飛の転回を見せた。
*控室を離れていた船江七段は戻ると、「めちゃくちゃ進んでますね」と驚きの声を上げる。永瀬はここまで38手目に使った4分が最長考慮で、その4分には席を外していた時間が含まれる。まだまだ研究範囲と見てよさそうだ。
*「このままのペースだと、1日目で3時間ほどの差がつくかもしれません。ここもすぐには指せないでしょうし。(1)▲3三桂成は△同金や△同桂のあと△4六飛と走られる手が残り、歩切れの先手は対策が必要になります。(2)▲7四歩がありそうで、△同銀▲5三桂成△同金▲7二角成の順はいかにもプロっぽい順です。ただしいずれにしても言えることとして、
千日手の心配はいまのところないでしょう」(船江七段)
49手 3三桂成(45) (16:00/01:56:00)*16分で銀を取った。
50手 同 金(32) ( 1:00/00:19:00)*「△4六飛があるので先手も忙しいです。▲3五歩が筋ですが、大人は▲4五歩のような手でしょうか」(船江七段)
51手 3五歩(36) ( 2:00/01:58:00)*藤井は筋の▲3五歩を選択。
52手 同 歩(34) ( 1:00/00:20:00)*ここもすぐに△3五同歩と応じた。
*別室に移動していた福崎九段が、
封じ手を入れる封筒に署名を終えて控室に戻ってきた。まだ午前中だが、仕事が早い。
53手 4五歩(46) ( 0:00/01:58:00)*3筋の突き捨てを入れておいてから4筋を伸ばす。藤井が席を立つと、永瀬は天井に視線を飛ばして止まった。
*「そうですね。▲7四歩は保留して△8一飛と回らせて▲7四角成と指したいように思いました」(船江七段)
54手 7五歩(74) ( 1:00/00:21:00)*歩を取り払って▲7四歩や▲7四角成を消した。▲7五同銀と呼び込んでも問題ないと見ており、そこで後手に手が広い。例えば、△7一桂と打てば角を取れる。
*「▲7五同銀以外の手があるんですかね。△7一桂には▲8四銀△8三桂▲同銀成で▲4四桂を狙って」(船江七段)
*「▲4四銀もありますか」(福崎九段)
*「あっ、▲4四銀ですか。なるほど。△同金▲同歩△同飛には▲4五金から▲2四歩で。取らずに△3四金とかのときにどうかですよね。まあでもここは指さずに休憩ですか」(船江七段)
*
*この局面で12時30分となり、1日目の昼食休